当事者は見た。障害者雇用における 雇う側の2つの戦略
こんにちは。Twitter就活にあこがれている発達障害当事者のなもなです。
2018年8月、障害者雇用において官公庁が規定に沿わないずさんな方法で雇用率を算出していたことが次々と明るみになっています。
省庁や自治体が障害者雇用を水増しの関連情報 - フォロー - Yahoo! JAPAN
私は二つの会社で障害をオープンにして働いてきました。
現在の勤務先でも、何年もかけて信頼関係を築いてきた自負があります。
今回の報道が 真剣に障害者雇用をしている事業主のやる気を削ぐことにならないかと危惧しています。
同時に、この機会に障害者雇用のリアルについて多くの方に知っていただきたく、記事をかきました。
おつきあいいただけると、なもな、とってもうれしいです!
(実体験をもとに ごく簡略化しています)
人を雇うって、そもそもどういうこと?
さて、事業主は一体なにを期待して従業員を雇い入れるのでしょうか。
こちらの図をごらんください。
まず、
【(障害者雇用ではない)一般的な雇用】
においては、端的にいうと
「『賃金』以上の『働き』をする」
のであれば、事業主がその人を雇って成果をあげたいと考えるのは自然なことですね。
つぎに、
【障害者雇用】
についてみてみると、そこには一般的な雇用との大きなちがいが二つあります。
事業主は「障害者の受け入れコスト」を負担する
ほとんどの場合、障害者を雇い入れるということは何らかの配慮を必要とします。
この配慮にかかる労力を、ここでは「受け入れコスト」とよぶことにします。
「受け入れコスト」には以下のようなものがあります。
障害者雇用をはじめるときのコスト
・障害があってもできそうな業務の棚卸し
・給与体系やサポート体制の確立
・施設のバリアフリー化
・就労支援機関とのやりとり
・採用活動
・行政への申請
ランニングコスト(雇い入れ後 継続して発生)
・OJT(実際の職場で実務をとおしてまなぶ訓練)
・業務の品質をチェックし、任せられる業務の範囲を見きわめる
・定期的な面談や体調のチェック
・就労支援機関とのやりとり
・行政への報告
また、一般の従業員も休んだときはおたがいにカバーしあって業務に穴があくのを防ぎますが、障害者は健常者に比べて急に体調がくずれることもあるので、カバーのためのコストが結果的に大きくなってしまう傾向があるかもしれません。
このように、障害者雇用には多様な受けいれコストがかかり、雇う側の機運が高まりにくい構造となっています。
それを調整するのが、つぎにおはなしする障害者雇用率制度です。
納付金により評価基準が変化する
事業主は障害者の法定雇用率を満たすことを義務づけられています。
もし、ある障害者を雇わないことで障害者雇用率未達成となってしまう場合は、事業主は5万円を支払わなければなりません(つまり、収支がマイナス5万円)
ここから考えると、収支が5万円以上の赤字にならない限りは、雇い入れた方が事業主にとってメリットがあるということになります。
参考:
常時雇用している労働者数が100人を超える障害者雇用率(2.2%)未達成の事業主は、法定雇用障害者数に不足する障害者数に応じて1人につき月額50,000円の障害者雇用納付金を納付しなければならないこととされています。
この障害者雇用率制度も活用し、どうやって障害者雇用をトータルでメリットのあるものにするかは、事業主の考え方によります。
障害者雇用で転職もした私の経験では、その戦略は二極化しているように感じました。
1:障害者は「いればいい」戦略
これは、対応のためのランニングコストを最小限に固定する戦略です。
一般的に業務の負荷はかるく、志望者には広く門戸がひらかれています。
この戦略のもとでは、あまりプレッシャーを感じずにはたらくことができます。
その一方でスキルアップや賃金の上昇、地位の向上はほぼありません。
この戦略をとる事業所では、労働法改正の影響で有期雇用されていた方の雇い止めがはじまっていると考えられます。
せっかく定着して5年間勤めあげられた職場を、互換性のあるスキルが身につかないまま辞めさせられるのは、障害当事者にとって絶望的なことです。
2:障害者は「コスパのいい存在」戦略
こちらは、一般の従業員に近い成果があがることを前提として障害者を雇い入れる戦略です。
障害当事者と事業主のキャリアプランが一致していれば、教育研修コストをかけてもらえ、キャリアアップへの道が開かれている 理想的な環境にもなりえます。
ただ 現状では 賃金水準は同程度のスキルや経験をもつ一般の従業員と同程度の場合もあれば、やや低水準に抑えられてしまうこともあるようです。
この点と、雇い入れれば納付金を支払わなくていい点で、当事者は「コスパのいい人材」という位置づけになります。
しかし、事業所が投資したとおりに障害当事者が成長してくれないと「コスパの悪い人材」になってしまうリスクがあります。
ここで、なかなか雇う側に伝わりにくい事実があります。
ひとくちに「仕事ができる/できない」といっても、その要因は様々で、たとえば
1:知識や経験がないからできない
2:障害によってできない
3:休まずに働き続けるのがむずかしいからできない
などがあり、このうち、雇う側が投資することで成長できるのは
1の知識や経験だけなのです。
2や3は本人の努力ではどうにもならない性質のものですが、1と切り分けていない、もしくは数年経つうちに忘れてしまう、ということがままあるように感じます。
この戦略で採用されると、勤務時間も成長スピードも無理のない範囲で勤務をはじめることができても、ある時点をすぎると急に高いレベルを要求されるようになることがあります。(半年後/3年経過後 など)
そして、雇う側にとっては、この高くなった要求レベルの方が本来その人に期待するものであったりします。
そうなると、障害当事者がそのレベルへの対応はむずかしいとうったえても聞き入れられず、身体をこわして退職してしまう、というケースが生じてしまいます。
(実は、私自身がそうでした)
しあわせな障害者雇用のために
当然ですが、今回あげた2つの雇用戦略は、募集時には明らかになっていません。
しかし、この記事をお読みいただいたのなら、どちらの戦略か予想しやすくなったのではないでしょうか。
障害者枠で働くことをご検討の方は、ご自身の特性やライフスタイル、築きたいキャリアを見渡して優先順位をつけたのち、しあわせに働けそうな職場をえらんでいただきたいと願っています。
仕事をお願いする側とやらせてもらう側、双方にとってしあわせな障害者雇用はいったいどんなものなのでしょうね。
個人的には、あたえられる業務や当番などの要素すべてができるかどうかを入社前にすりあわせるのは不可能なので、定期的な面談の上
・配慮をお金で買う(給与天引き)
もしくは
・できる業務だけを請け負う
ことができればいいのに、と夢想しています。
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この記事が あなたが障害者雇用についてかんがえるきっかけになれば、なもなはとってもとってもうれしいです!
今、あなたはどんな気分ですか?
もっと吸収したいあなたは、こちらの記事をあわせてお読みください。
それとも あなたも語りたくなった?どうぞいってらっしゃい。
またお会いしましょうね。↓↓↓