こころのアルゴリズム、私にもください

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バーチャル発達障害者のおかしな人工知能論

「発達障害当事者研究」を読んで:感覚過敏と意思決定のあたらしいとらえ方

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こんにちは。視覚と聴覚の刺激によわい、なもなです。

今回は発達障害の特性のひとつ、感覚過敏についてかんがえていきます。

私は、感覚過敏と意思決定の難しさ、そして自我は無関係ではないと思います。

 

さまざまな情報を取りこぼすまいとがんばっているあなた。

でも、そんな中で「私は私だ」という感覚は特別枠にいれていいんですよ。

おつきあいいただけると、なもな、とってもうれしいです!

  「発達障害当事者研究」とのであい

二年ほど前に大きく体調をくずしたのをきっかけに、私は定期的に民間のカウンセリングルームを利用しています。

カウンセリングのとき、臨床心理士の方に感覚過敏についてお話ししたところ、「発達障害当事者研究―ゆっくりていねいにつながりたい (シリーズ ケアをひらく)」という本を紹介してもらいました。

 

この本は、2008年に発行された

発達障害の当事者であり、当事者として発達障害を研究している

綾屋 紗月(あやや さつき)さんと、

綾屋さんのパートナーで 脳性まひをもつ小児科医の

熊谷 晋一郎(くまがや しんいちろう)さんの共著です。

 

この本では、発達障害当事者としての綾屋さんの感じ方がまんべんなくまとめられています。

次項でその一部を引用します。

身体の内外から 様々な主体の自己紹介がはじまる

一方、私はまず、「おなかがすいた」という感覚がわかりにくい。なぜなら、身体が私に訴える感覚(以下、身体感覚)は当然、このほかにもつねにたくさんあるわけで、「正座のしすぎで 足がしびれている」「さっき蚊に刺された場所がかゆい」「鼻水がとまらない」など空腹感とは関係のないあまたの身体感覚も、私には等価に届けられているからである。


さらに、私に届けられる情報には、このような身体内部からの感覚だけではなく、見たり聞いたり触れたりなどの五感を通じてインプットされる身体外部からの情報もある。だから、これら大量の情報を絞り込み、「おなかがすいた」をまとめあげ、「食べる」という具体的行動にまで移すというのは毎回とてもむずかしい、ということになる。

 

綾屋 紗月・熊谷 晋一郎(2008)『発達障害当事者研究』医学書院

 

このような描写を読むと、私でさえも「こりゃ大変だ」と思います。

 

ちょっと動いただけで(あるいは、単に時間が経過しただけで)情報の洪水がやってくること。

その時の雑然とした脳内情報空間の様子。

その中で意思決定することがどれだけ困難か。

それらが具体的に描写されています。

 

そして、程度の差こそあれ、私も(特に身体外部からの)情報の洪水におぼれながら毎日を過ごしている一人なのです。

 

感覚刺激と自我の意識が肩を並べている状態

 この綾屋さんの表現を、私が自分の体感と人工知能の考え方をまじえて解釈してみます。


たとえば、私が にぎわう街に降り立ったとします。

すると脳に以下のような情報がほぼ同時に入ってきました。

A:秋の新製品まつり!(視覚情報)

B:鼻水がとまらない(身体感覚)

C:私は私だ(自我の意識)

D:30分後にくる電車にのらないとかえれない(思考)

E:飲み放題1000円ポッキリ!いかがすかー?(聴覚情報)

F:胃がへこんでいる→おなかがすいてるかも?(身体感覚)

 

私は、これらのうち どの情報を優先すべきか基準をもっていません。

そうなると、私の脳内ではこの 6つの情報が「等価に」つまり同じ強さで、

「(内部の情報のかじを取り、意思決定と行動をする)私」

に語りかけつづけます。

当然私は 頭がいっぱいになり、混乱し、時には思考停止して固まってしまいます。

 

しかし、ここで今一度上の6つの情報をごらんください。

この中で

C:私は私だ(自我の意識)

が私の生存にとって断トツで重要ではないでしょうか。

 

うけとった情報を評価し、取捨選択する 

 

つまり、6つの情報を平等にあつかう必要などないのです。

C:私は私だ(自我の意識)

を肌身離さずかかえながら、他の情報も吟味していきましょう。

つぎに重要なのは

F:胃がへこんでいる→おなかがすいてるかも?(身体感覚)

でしょうか。それから、

D:30分後にくる電車にのらないとかえれない(思考)

など、リスクも考慮しつつ、自由に主体的に優先順位をつけていいのです。

そうすれば自ずから、どう行動するかも決まってきます。

(立ち食い蕎麦を食べてから帰りの電車に乗る、など)

そしてあとの3つの情報は、対応する必然性がなければ捨ててしまっていいのです。

 

実際、定型発達(発達障害ではない)の人は、このような情報の取捨選択を無意識におこなっているといわれています。

 

カクテルパーティー効果 - Wikipedia

 

人工知能の「評価値」

そして、人工知能にも同じような概念があります。

たとえば、オセロで石を置ける場所の情報が複数あるとき。

あらかじめ 勝ちにつながりそうなマス(角など)に高い得点、勝ちから遠ざかりそうなマスに低い得点をつけておきます。

これを「評価値」といいます。

あとは、順番がまわってくるたび最高点のマスに石を置くように人工知能をプログラムすれば、あたかも考えているような動きをするわけです。

 

オセロの評価値を作ってみよう! 羊の人工知能研究 ~将棋AI開発の日々~

 

人間の場合、

「生存との関わり」

「こころの底からの満足度」

で評価値をつくればよさそうです。

 

主体性で敏感さが活きてくる

ここで私は一つの式を提案します。

感覚過敏の困難度=情報を繊細に感じとる力の強さ×情報を評価できる主体性の弱さ

 

繊細さはその人固有のものであるため、お互いに尊重できるといいですね。

 

そして、感じとった情報を評価し、自分にとって重要なものを選びとるのはやはり主体性のなせるわざだと思います。

主体性をのばすことで、敏感さを「困難のみなもと」から「人生を豊かに彩る能力」に転換できる人がふえてくるよう願ってやみません。

 

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さいごまでおつきあいいただき、なもなはとってもとってもうれしいです!
記事をよんだ今、あなたはどんな気分ですか?


今回の記事の元となった本はこちらです。
よろしければ クリックして詳細をごらんください↓

 

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またお会いしましょうね↓↓↓